歩く速さが違う犬たち、同じ散歩で無理をさせていませんか?

朝の支度をしていると、玄関の気配だけで先に背筋を伸ばす犬と、まだ寝床からゆっくり出てくる犬がいます。同じ家で暮らしていても、散歩に向かう気分も歩く速さも、犬ごとに違うものです。

多頭飼いの飼い主さんからは、「一緒に連れて行くと片方が急ぎ、もう片方が遅れてしまう」というご相談をいただきます。二頭を同じ時間に歩かせることが、いつもいちばん良いとは限りません。

私の家でも、モモは人の気配がある方向へ足取りが軽くなります。一方、14歳のナナは壁ぎわを選んで、周囲を確かめながら進みます。以前は二頭で出る日もありましたが、モモの歩調に引っぱられると、ナナは立ち止まる回数が増えました。リードを持つ私も急がせないよう気を張り、散歩の終わりにはみんな少し疲れていたんですよね。

「一緒に行けるか」より、帰宅まで落ち着いて歩けるか

犬同士の仲がよくても、散歩中に欲しいものまで同じとは限りません。排泄を済ませたら家へ戻りたい犬もいれば、匂いをゆっくり追いたい犬もいます。若い犬と年齢を重ねた犬、小柄な犬と歩幅の大きい犬では、道の一周が同じ意味にならないこともあります。

まず見たいのは、出発直後の勢いより、途中からの様子です。片方が前へ出続けて首を伸ばしていないか。遅い犬が何度も後ろを振り返っていないか。耳が固くなったり、呼吸が荒くなったりしていないか。帰宅後にいつもより横になる時間が長くないか。こうした小さな変化が続くなら、組み合わせを見直す頃かもしれません。

犬具屋としては、二頭を同時にしっかり制御することより、それぞれが予測できる速さと順番をつくることを優先します。

先に短い散歩を済ませる日があっていい

散歩を分けるとなると、毎日二倍の時間が必要に思えるかもしれません。でも、長いコースと短いコースを同じ基準で考えなくて大丈夫です。

ナナには、家の近くを壁づたいに歩き、落ち着いたところで戻る散歩が合う日があります。そのあとモモを連れ、少し遠回りして人のいる道を歩く。犬ごとに目的を分けると、こちらも「二回の散歩を完璧にこなさなくては」と構えずに済みます。

天気や家の予定で二頭一緒になる日もあります。そんな日は、いつもの散歩を縮めて、歩調の遅い犬に合わせるほうを選びます。速く歩ける犬には物足りなく見えるかもしれませんが、翌日にその子だけ少し長めに歩くという手もあります。毎日同じ配分にそろえるより、数日単位で見たほうが家の空気は穏やかです。

組み合わせを決める前に、犬の「待つ時間」も見ておく

一頭ずつ出かけると、家で待つ犬が気になる飼い主さんも多いはずです。モモは玄関の音に敏感なので、ナナだけ先に出す日は、私が戻るまでそわそわしやすいことがあります。

そこで、出発の順番を毎日固定しすぎないことがあります。先に出る犬、あとで出る犬をときどき入れ替え、待つ側にも「今日はこの順番か」と受け止められる余地をつくるためです。ただし、順番が変わるだけで強く落ち着かなくなる犬なら、無理に変える必要はありません。予測できる暮らしのほうが合う子もいます。

帰宅したら、使った散歩用品を同じ場所に戻す。この小さな習慣も意外に役立ちます。次の犬を連れ出すときに探し物をせず、飼い主さんの焦りが犬へ伝わりにくくなるからです。

今日から試せる実践Tips

  • 二頭で歩いた日の帰宅後、それぞれがどこで疲れたように見えたかを一言だけメモする。
  • 一頭ずつの日は、長さをそろえるより「その子が落ち着いて戻れたか」で散歩を終える。
  • 一緒に歩く日は、急ぐ犬ではなく、歩調がゆっくりな犬の速さを基準にする。
  • リードや袋、水分などを帰宅後に定位置へ戻し、次の出発を慌てない段取りにする。

散歩の形は、犬の年齢とともに変わります

以前は一緒に歩けた二頭でも、年齢や体調、周囲への感じ方が変われば、ちょうどよい組み合わせも変わります。分けて歩くことは、仲を引き離すことではありません。それぞれの散歩を、その子の時間として扱うことです。

ぐったりしている、呼吸が苦しそうに見える、立てない、吐くなどの様子があるとき、または飼い主さんが不安を感じるときは、犬具や散歩の工夫より先に獣医さんなど専門家へ相談してください。

リードは、犬ごとの散歩の速さや持ち方を見直すきっかけにもなります。散歩用品を戻す場所を整えたタイミングで、手元に合うものを確認したい飼い主さんは、リード・引き綱もご覧ください。毎日の出発が少し静かになれば、それで十分だと私は思います。

関連する記事

Comments

spot_img

Instagram

Most Popular