東日本大震災から15年。豪雨・地震・避難所生活に備えて、今すぐ飼い主ができること
2026年、東日本大震災から15年が経ちました。
あの日、想像を超える混乱のなかで、多くの飼い主が「自分の命を守ること」と「ペットを守ること」の間で、苦しい判断を迫られました。避難所に入れない。仮住まいで飼えない。預けたまま迎えに行けない。そうした現実は、決して過去の話ではありません。
環境省の東日本大震災の記録では、自治体が把握した範囲だけでも、所有者不明として保護された犬は689頭、猫は39頭にのぼりました。また、ペットの一時預かり後に所有権放棄が確認された例もあり、その理由には「転居先で飼えない」「飼い主の病気・けが」「避難所でペットを飼えない」などが含まれていました。
出典:環境省「東日本大震災における被災動物対応記録集」
そして2026年の今、私たちは地震だけでなく、毎年のように起こる豪雨災害にも備えなければなりません。2018年の西日本豪雨、2020年の令和2年7月豪雨、2024年7月の山形県・秋田県の大雨など、7月は日本の災害カレンダーの中でも特に警戒すべき時期の一つです。
出典:気象庁「平成30年7月豪雨」
さらに気象庁の「日本の気候変動2025」では、1時間に50mm以上の非常に激しい雨の年間発生回数が、1976〜1985年と2015〜2024年の比較で約1.5倍に増えていると示されています。つまり、災害は「いつか来るもの」ではなく、毎年の暮らしの中で現実的に向き合うものになっています。
出典:気象庁「日本の気候変動2025」
「ペットは家族」。その言葉に、責任という備えを。
目次
- 同行避難と同伴避難の違い
- なぜ2026年の今、ペット防災が重要なのか
- 飼い主が今すぐやるべき3つの備え
- マイクロチップ・迷子札・鑑札の比較
- 2026年版 ペット用防災セット
- 迷子対策
- 2026年に追加したい現実的な備え
- 今日から30分でできること
- 根拠・追加情報まとめ
1. まず知っておきたい「同行避難」と「同伴避難」の違い
ペット防災で最初に理解すべき言葉が、同行避難です。
同行避難とは、災害時に飼い主がペットを連れて安全な場所まで避難する行動のことです。ただし、ここで注意が必要です。同行避難=避難所の同じ部屋で一緒に過ごせる、という意味ではありません。
環境省の整理では、同行避難は「ペットとともに安全な場所まで避難すること」を指し、避難所内での飼養環境までは意味しません。一方、同伴避難は避難所などで飼い主がペットを飼養管理している状態を指しますが、それでも同室飼養を意味するとは限らず、別室、屋外、車中など自治体や避難所の状況によって扱いが変わります。
出典:環境省「人とペットの災害対策ガイドライン 改訂関連資料」
飼い主が確認すべきこと
- ペットを連れて避難所まで行けるか
- 避難所でペットをどこに置くのか
- その環境で自分のペットが安全に過ごせるか
「同行避難できます」と書かれていても、同じ部屋で過ごせるとは限りません。ここを誤解したまま災害当日を迎えると、避難所で大きな混乱が起きます。
2. なぜ2026年の今、ペット防災がさらに重要なのか

理由1:災害の種類が広がっている
地震だけでなく、豪雨、土砂災害、河川氾濫、猛暑時の停電など、ペットの命を脅かす災害は増えています。特に7月は梅雨末期の大雨が発生しやすく、過去にも大規模な豪雨災害が繰り返されています。
理由2:避難所対応は地域差が大きい
環境省は、飼い主に対して「ペット同行避難が可能な避難所かどうか」「避難経路はどうするか」「ペット用品や薬を準備しているか」を平時から確認するよう呼びかけています。避難所では動物が苦手な人やアレルギーのある人への配慮も必要であり、自治体や避難所のルールに従うことが前提になります。
出典:環境省「災害時におけるペットの救護対策」
理由3:2024年能登半島地震の教訓がある
令和6年能登半島地震では、被災動物対応本部の設置、巡回診療、ペットの一時預かり、ケージやフードの支援、1.5次避難所でのペットスペース確保など、さまざまな支援が行われました。これは重要な前進です。
しかし裏を返せば、発災直後からすべての支援がすぐ整うわけではないということでもあります。最初にペットの命を守るのは、飼い主自身です。
出典:環境省「令和6年能登半島地震における被災ペット対応」
理由4:日本獣医師会の災害対応体制も強化されている
2026年2月には、日本獣医師会が災害対策基本法上の指定公共機関に指定されました。これにより、大規模災害時の被災動物支援、公衆衛生、獣医療支援における連携強化が期待されています。
出典:内閣府「公益社団法人日本獣医師会への指定公共機関の指定通知書交付式」
制度や支援体制は進んでいます。ですが、災害直後の数日間を乗り切る準備は、飼い主の備えにかかっています。
3. 飼い主が今すぐやるべき3つの備え
1. 避難先の“現実”を知る
まず、お住まいの自治体の防災ページを確認し、ペット同行避難が可能な避難所を調べてください。
確認すべきことは、単に「ペット可」かどうかではありません。
- ペットは屋内か、屋外か
- 飼い主と同じ部屋で過ごせるのか
- ケージやクレートが必須か
- 犬・猫以外の動物は受け入れ対象か
- ワクチン証明書や健康情報の提示が必要か
- 避難所が満員の場合の代替先はあるか
さらに、国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、洪水、内水、高潮、津波、土砂災害などの災害リスクや避難場所を確認できます。自宅から避難所までの道が浸水区域や土砂災害警戒区域に入っていないか、事前に確認しておくことが重要です。
出典:国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
代替避難先は最低3つ用意
- 親族宅
- 友人宅
- かかりつけ動物病院
- ペットホテル
- 車で一時避難できる安全な場所
2. 一緒に避難できる体制をつくる
災害時にペットがキャリーやクレートに入れないと、避難そのものが難しくなります。
普段から次の練習をしておきましょう。
- キャリーやクレートに入る練習
- リード、ハーネス、首輪に慣れる練習
- 「待て」「おいで」「ハウス」など基本指示の練習
- 無駄吠え、興奮、噛みつきへの対策
- トイレシートや決まった場所で排泄する練習
- 人や他の動物がいる場所で落ち着く練習
特に避難所では、動物が苦手な人、アレルギーのある人、小さな子ども、高齢者も一緒に過ごします。ペットのしつけは「よい子に見せるため」ではなく、避難所で受け入れてもらいやすくするための命を守る準備です。
3. “命をつなぐ情報”を1枚にまとめる

災害時、飼い主がけがをしたり、スマートフォンの電池が切れたり、ペットだけが保護されたりする可能性があります。
そのため、次の情報を紙で用意しておきましょう。
- ペットの名前
- 種類、犬種・猫種、性別、年齢
- 毛色、体重、特徴
- 性格、怖がるもの、逃げやすい方向
- 持病、アレルギー、常用薬
- ワクチン接種状況
- マイクロチップ番号
- かかりつけ動物病院
- 飼い主の氏名、電話番号、メール
- 緊急連絡先
- ペットの顔写真、全身写真、飼い主と一緒に写った写真
このカードは、防災バッグ、キャリー、財布、車の中に分散して入れておくと安心です。
4. マイクロチップ、迷子札、鑑札。どれが一番信頼できる?
結論から言うと、どれか一つでは不十分です。2026年版の正解は「三重化」です。
| 手段 | 強み | 弱み | 2026年版の考え方 |
|---|---|---|---|
| 迷子札・名前入り首輪 | 誰でもすぐ読める | 装着していないと意味がない | 最速で飼い主に連絡できる。必須。 |
| 犬の鑑札・狂犬病予防注射済票 | 公的な識別情報になる | 外れる、文字が消える | 犬は必ず装着。迷子時の返還に役立つ。 |
| マイクロチップ | 体内に入るため外れにくい | 読み取り機と登録情報が必要 | 登録情報の更新まで含めて有効。 |
| エアタグ | 位置情報に強い | 電池切れ、通信障害、読み取り困難 | 補助ツール。主役にしない。 |
東日本大震災の記録では、犬の迷子札は4件中4件、鑑札・狂犬病予防注射済票は81件中81件で所有者が判明しました。一方、首輪だけの犬は604件中85件、首輪だけの猫は39件中0件でした。マイクロチップについては、AIPOに登録されていなかったため所有者が判明しなかった事例が記録されています。
出典:環境省「東日本大震災における被災動物対応記録集」
ここから分かる教訓は、「マイクロチップが役に立たない」ということではありません。登録され、最新情報に更新されていて、読み取りにつながって初めて機能するということです。
さらに、2022年6月1日以降、ブリーダーやペットショップで販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化され、購入者は飼い主情報への変更登録が必要になりました。すでに飼っている犬猫に動物病院などでマイクロチップを装着した場合も、環境省のデータベースへの登録が必要です。
出典:環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録」
また、犬については登録時に交付される鑑札、狂犬病予防注射後に交付される注射済票を犬に装着することが求められています。厚生労働省も、鑑札には登録番号が記載されており、迷子になった犬を飼い主のもとへ戻すために役立つと説明しています。
出典:厚生労働省「犬の鑑札、注射済票について」
おすすめの組み合わせ
- 首輪に迷子札
- 犬は鑑札・狂犬病予防注射済票
- マイクロチップ登録
- キャリーにも名前と連絡先
- 防災カードにも写真と連絡先
災害時に最も強いのは、「誰でもすぐ読める情報」と「外れても残る情報」の併用です。

5. 命を守る!2026年版 ペット用防災セット
環境省は、ペット用のフードや水について、少なくとも5日分、できれば7日分以上の備蓄を推奨しています。療法食や薬が必要なペットは、一般的な支援物資では代替できないため、特に早めの準備が必要です。
出典:環境省「人とペットの災害対策ガイドライン 一般飼い主編」

基本セット
- ドライフード、ウェットフード
- 飲料水
- 療法食
- 常用薬
- 処方箋や薬の説明書コピー
- 折りたたみ食器
- キャリー、クレート、ケージ
- 首輪、ハーネス、リード
- 予備の首輪・リード
- 迷子札
- 犬は鑑札・狂犬病予防注射済票
- マイクロチップ登録証明情報
- ワクチン証明書コピー
- 健康情報カード
- ペットの写真
- 飼い主と一緒に写った写真
- 緊急連絡先一覧
- トイレシート
- マナー袋
- 猫砂、使い慣れた砂
- ティッシュ、ウェットシート
- タオル、毛布
- クレートカバー
- お気に入りのおもちゃ
- ブラシ
- ゴミ袋
- 使い捨て手袋
- 養生テープ
- 懐中電灯
- モバイルバッテリー
- 防水袋、ジッパーバッグ
季節・環境に応じて追加するもの
夏の備え
- 保冷剤
- 冷感マット
- 携帯扇風機
- 日よけ用品
- 飲み水の追加備蓄
冬の備え
- 毛布
- 保温マット
- ペット用防寒着
- クレートカバー
瓦礫、割れたガラス、熱くなったアスファルトを歩く可能性がある犬には、ペット用靴も選択肢になります。ただし、災害当日に初めて履かせても歩けないことが多いため、普段から慣らしておく必要があります。
消毒用品は、ペットに直接吹きかけないことが前提です。舐める可能性がある場所では、ペット用やノンアルコールタイプを選び、製品表示に従って使いましょう。
6. “もしも迷子になったら”に備える
災害時は、玄関や窓が壊れる、リードが外れる、パニックで逃げる、避難中にキャリーが開くなど、普段では考えにくい迷子が起こります。
事前に以下を準備してください。
迷子チラシのテンプレート

- ペットの写真
- 名前
- 種類、性別、年齢
- 毛色、体格
- 首輪や迷子札の有無
- 逃げた場所と日時
- 性格
- 近づいてよいか、追いかけない方がよいか
- 飼い主の連絡先
- かかりつけ動物病院
- マイクロチップ番号
SNS投稿用テンプレート
災害時は情報が混乱します。すぐ投稿できるよう、文章も事前に作っておくと安心です。
【迷子犬を探しています】
〇月〇日〇時ごろ、〇〇市〇〇付近で逃げてしまいました。
名前:〇〇
犬種:〇〇
毛色:〇〇
特徴:〇〇
首輪:〇色、迷子札あり
怖がりなので追いかけず、見かけた場所を連絡してください。
連絡先:〇〇
デジタルだけに頼るのは危険です。停電、通信障害、スマートフォンの電池切れに備え、紙でも複数枚印刷しておきましょう。
7. 2026年に追加したい現実的な備え
避難先マップを作る
自宅から避難所までのルートを1本だけ決めるのではなく、複数用意します。
- 第1避難先:指定避難所
- 第2避難先:ペット受け入れ可能な別避難所
- 第3避難先:親族・友人宅
- 第4避難先:動物病院・ペットホテル
- 第5避難先:車で一時待機できる安全な場所
ハザードマップで、浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波浸水想定、避難場所を確認し、印刷して防災バッグに入れておきましょう。
ペット保険・医療費を確認する
災害時にけがをした場合、通院・入院・手術が補償対象になるのかを確認しておきます。
特に確認したいのは、次の項目です。
- 災害時のけがが対象か
- 避難中の事故が対象か
- 通院、入院、手術の上限額
- 免責金額
- 保険証券や契約情報を紙で持ち出せるか
保険に入っていない場合でも、医療費用の緊急資金を別に確保しておくと安心です。
マイクロチップ情報を更新する
マイクロチップは、入っているだけでは不十分です。電話番号、住所、メールアドレスが古いままだと、保護されても連絡がつきません。
次のタイミングで必ず見直しましょう。
- 引っ越したとき
- 電話番号を変えたとき
- メールアドレスを変えたとき
- 飼い主が変わったとき
- 結婚や改姓で氏名が変わったとき
自治体に確認する
自治体のホームページに情報が少ない場合は、危機管理課、防災課、生活衛生課、環境衛生課などに確認しましょう。
聞くべき質問は、次の通りです。
- ペット同行避難できる避難所はどこですか
- 犬猫以外の動物は対象ですか
- ケージは必須ですか
- ペットは屋内ですか、屋外ですか
- 飼い主と同室で過ごせますか
- 必要書類はありますか
- 避難訓練でペット同行避難の訓練はありますか
環境省の改訂版原稿案でも、市区町村の役割として、平時からの普及啓発、ペット同行避難訓練、避難所や応急仮設住宅でのペット受け入れに関する調整などが整理されています。
出典:環境省「人とペットの災害対策ガイドライン改訂検討資料」
8. 今日から30分でできるペット防災

「全部やらなきゃ」と思うと、なかなか始められません。
まずは今日、次の5つだけやってください。
- 首輪に電話番号を書く
- ペットの顔写真と全身写真を撮る
- フードと水を7日分に近づける
- 自治体のペット同行避難情報を確認する
- マイクロチップや迷子札の連絡先が古くないか確認する
これだけでも、災害時の生存確率と再会の可能性は大きく変わります。
最後に:ペットは、自分で避難できません
ペットは、避難所を選べません。
備蓄を用意できません。
ハザードマップを見られません。
自分の名前や連絡先を説明できません。
だからこそ、飼い主の準備がすべてです。
「ペットは家族」という言葉には、責任が伴います。
災害が起きてからでは、できることは限られます。
でも、今日ならできます。
- 迷子札をつける
- フードを備える
- 避難先を調べる
- キャリーに慣れさせる
- 連絡先を紙に書く
その小さな準備が、いつか大切な命を守ります。
家族の命を守れるのは、あなたです。今日から、ペット防災を始めましょう。



