テーブルの下から、犬が目だけをこちらに向ける。あの上目遣いを「かわいく見せている」と感じることはありますが、犬が自分をかわいいと人間のように自覚しているとは言い切れません。表情だけで決めず、何を見て、次にどう動くかを手がかりにしましょう。
「かわいく見せる」とは限らない
犬が自分の見た目を、人間と同じ意味で「かわいい」と評価しているかは、表情だけからはわかりません。上目遣いも、それだけで「飼い主を操ろうとしている」とは言えないものです。
人の顔を見上げるのは、こちらの様子をうかがっている、何かを求めている、音や動きに注意を向けているなど、いくつかの場面で見られます。たとえば、食卓で箸が止まった瞬間に視線が合うこともあれば、散歩の支度でリードを手にしたときに顔を見上げることも。目つきは似ていても、前後の出来事は違います。
人間の側は、あの目にめっぽう弱いものです。見つめられたら、用事の手を止めて話しかけてしまう。犬から見れば、目を向けたら人が反応した、という流れができているのかもしれません。これは「かわいいと知っている」と同じではなく、行動のあとに何が起きたかを犬が経験している、という見方です。
目だけでなく、前後の動きを見る
上目遣いが出たときは、その直前に何があったかを思い出してみます。食事の時間か、遊びの途中か、名前を呼んだあとか。続いて犬が近づくのか、じっと待つのか、視線を外すのかも一緒に見ます。
耳が前を向いている、体がこちらに寄っている、といった様子も手がかりになります。ただし、耳やしっぽの位置ひとつで気持ちを断定することはできません。同じ顔に見えても、犬の体全体や周りの状況で受け取り方は変わります。
サクラ犬具製作所で首輪をつくる私が気にしているのは、犬の気持ちを人間の表情だけで決めつけないことです。犬具屋としては、目を引く一つの仕草より、犬がどんな場面でどう動くかを優先して見ます。上目遣いを「おねだり」と決めて毎回応じる必要も、「演技だ」と疑う必要もありません。
上目遣いが気になったら、いつ見る?
一度の表情から結論を出すより、似た場面で繰り返すかを見てください。おやつを持ったときだけなら、その手元に関心が向いているのかもしれません。声をかけたときに見上げるなら、声や次の動きを待っている可能性もあります。どちらも推測にとどめ、犬の行動と合わせて考えます。
もちろん、急に目を細める、顔を触られるのを嫌がる、いつもと違う様子が続くなど、表情以外にも気になる変化があるなら、かわいさや癖の話として片づけないでください。犬がぐったりしている、呼吸が苦しそう、立てない、吐く、または飼い主さんが心配に感じるときは、犬具の工夫より獣医師への相談を優先してください。
今日から試せる実践Tips

今日、犬が上目遣いをしたら、すぐに意味を決めず、直前に自分が何をしていたかだけ思い返してみてください。目が合った瞬間のかわいさはそのまま味わって、答えは前後の行動から考える。それくらいの距離感が、犬のことを見誤らない助けになります。


