子犬のころは後を追ってきたのに、今は少し離れた場所で眠っている。そんな変化を感じたら、成長した愛犬との距離は、犬が自分から近づける余地を残すのが基本です。いつから、と決める必要はありません。変化がゆるやかか急かを見ながら、触れ合い方を調整しましょう。
「前より甘えない」は、気持ちが離れた証拠とは限らない
子犬のころは、飼い主さんの足音がするたびに小さな体がついてくる。ところが成長すると、同じ部屋にいても、少し離れた敷物の上で丸くなることがあります。呼べば顔を上げるけれど、すぐには来ない。こちらとしては、あのころの「どこへ行くの?」が恋しくなる場面です。
でも、近くにぴたりと寄ることだけが、犬の安心の表し方ではありません。自分の場所で休むことや、遊びに誘われても今は動かないことも、その犬なりの過ごし方かもしれません。犬の気持ちは断定できませんが、距離ができたように見えるとき、飼い主さんへの愛情が薄れたとすぐ結びつけなくて大丈夫です。
ここで少し意外なのは、寂しくて何度も呼ぶことが、犬には「近づく機会」ではなく「応え続ける合図」に感じられることもある、という点です。もちろん受け取り方は犬それぞれ。呼んでも来ないと、つい声に力が入ります。二度目は少し大きく、三度目には飼い主さんのほうが立ち上がる。犬はその間、寝床でまばたきひとつ。こちらの気持ちだけが先に散歩へ出てしまうこともあります。
距離を変えるのは、いつ?
「成犬になったら、接し方を変える」と年齢で線を引く必要はありません。子犬のころと比べて、ひとりで休む時間が増えた、遊びの誘いに乗る回数が変わったなど、いつもの様子を手がかりにします。近くに来たときは静かに応じ、離れているときは追いかけて触ろうとしない。犬が自分で距離を選べるようにすると、触れ合いが一方通行になりにくくなります。
たとえば、犬が床の上で横になっているとき。頭をなでたくなっても、まずは手を伸ばさず、犬のほうを見るだけにしてみます。耳がこちらを向く、顔を上げる、体ごと近づく。そんな反応があれば、短く声をかけたり、そっと触れたりできます。反対に、顔を背ける、体を固くする、その場から離れるなら、そこで手を止めます。触れ合いは、長さよりも「犬が終わりにできること」を大切に。
犬具をつくる私たちも、道具だけでなく、毎日どう扱うかが使い心地を左右すると考えています。犬具屋としては、接触を増やすことより、犬が近づいたり離れたりできる流れを優先します。飼い主さんが少し待つことで、犬が自分から鼻先を寄せてくる。その短い間を急いで埋めないのが、案外むずかしいところです。
急に変わったときは、成長だけと決めつけない
距離の変化がゆっくりなら、成長や暮らしの変化に合わせた行動の変化として見守れることもあります。一方、急に触られるのを嫌がる、いつもと違う場所に隠れる、散歩や食事への反応まで変わるなど、変化が急だったり、ほかの様子も気になったりするときは、性格の変化だと片づけないでください。
行動だけから原因を決めることはできません。ぐったりしている、呼吸が苦しそう、立てない、吐くといった様子があるときや、飼い主さんが心配なときは、道具や接し方の工夫より先に獣医さんなど専門家へ相談してください。急な行動の変化についても、気になるときは獣医さんに相談を。いつから、どんな場面で変わったかを伝えると、状況を説明しやすくなります。
今日から試せる実践Tips

今日ひとつ試すなら、愛犬がくつろいでいるとき、名前を呼ばずに少し離れて座ってみてください。目が合ったら、すぐ手を伸ばさず、犬が近づくかどうかを待ちます。来なければ、そのまま同じ部屋で過ごせば十分です。近くにいながら構わない時間も、距離を測る手がかりになります。
子犬のころと同じ甘え方に戻すことが目標ではありません。今の愛犬が選んだ場所や、近づいてくる間合いを受け止めること。飼い主さんの手を出す前に、ほんの少し待つところから始めてみましょう。


