犬にしつけの合図を教えるには、家で何から始める?

「おすわり」と言っても、犬がこちらを見たまま動かない。そんなときは、言葉を何度も重ねるより、まず静かな場所で一つの動きを教えます。できた瞬間にほめ、合図の言葉は動きが見えてから添えるのが基本です。家庭では、短く区切り、犬が迷い始める前に終えることを意識します。

最初は、言葉より動きが伝わる場面から

練習場所は、テレビや人の出入りが気になりにくい部屋の一角で十分です。床に腰を下ろし、犬がこちらを向いたら、手の動きなどで「おすわり」の姿勢を促します。お尻が床についたら、その瞬間にほめて、小さなおやつを使うならすぐに渡します。声が先、動きが後と急がず、犬が何をしたときにほめられたのか結びつきやすい順に進めます。

犬にとっては、合図の言葉も人の手の動きも、最初から意味が決まっているわけではありません。飼い主さんが「おすわり」と言ったのに、犬が床のにおいを確かめていることもあります。聞こえていないというより、今は別のことに意識が向いているのかもしれません。そこで同じ言葉を何度も重ねると、言葉と動きの結びつきが見えにくくなります。

私なら、最初は手の動きで姿勢を促し、できたところをほめる順にします。犬具屋としても、合図を増やすより、犬が次に何をすればよいか予測しやすい順番を優先します。まずは一つの動きだけでかまいません。

できた瞬間に合図を添える

動きが出てきたら、犬がおすわりをした瞬間に「おすわり」と一度だけ言い、すぐほめます。合図は、できてから後づけするような感覚です。繰り返すうちに、言葉と姿勢が結びついていきます。すでに言葉を先に言う練習をしている場合も、犬が動く前に何度も言い直すのではなく、いったん簡単な場面に戻してみてください。

うまくいかないときは、犬が迷っているのか、周囲の音や動きに気を取られているのかを見ます。耳が外を向く、床のにおいを嗅ぎ始める、立ち去る。そうした様子が出たら、その場で声を強めるより、練習を止めて休みましょう。ごほうびを見せ続けて犬を引っぱる形にもせず、できた動きを待てる難しさに調整します。

一回の練習を長く続ける必要はありません。犬の集中が切れる前に区切り、次に同じ場所で再開します。最後が完璧でなくても大丈夫。人のほうが「もう一回だけ」と言いがちですが、その一回で犬の顔が「今日は閉店です」と語ることもあります。

家族の合図は、言葉と動きをそろえる

家庭で教えるときに見落としやすいのは、犬より先に人の合図がばらばらになることです。同じ動きに違う言葉を使ったり、一人は手を上げ、もう一人は胸の前で手を動かしたりすると、犬には別の合図に見えるかもしれません。家族で練習するなら、まず教える言葉と手の動きを決めておきます。

合図の前に犬の名前を呼ぶ習慣があるなら、その順番もなるべくそろえます。名前を呼んだらこちらを見る、次に合図を出す、できたらほめる。こうした流れが安定すると、犬も次の行動を予測しやすくなります。反対に、家族の全員が一度に声をかけると、犬はどの人を見ればよいか迷うことがあります。練習役は一人ずつ交代すると進めやすくなります。

できない日があっても、犬がわざと無視していると決めつけず、場所やタイミングを戻してみてください。家の中でできたら、別の部屋など少し違う場面でも試します。ただし、場所が変われば周囲の刺激も変わります。家でできたから外でもすぐできる、と急がず、犬が落ち着いて取り組める段階を重ねます。

今日から試せる実践Tips

犬が座った瞬間に飼い主がほめている練習場面

今日は「おすわり」など一つだけ選び、静かな場所で、犬ができた瞬間にほめる練習をしてみてください。言葉を先に何度も繰り返さず、動きが出てから合図を添えるのがポイントです。うまくいかなくなったら、声を足すのではなく一度終えて、次の機会に簡単なところからやり直します。合図を教える時間は、犬を試す時間ではなく、伝わる形を人が探す時間でもあります。

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