散歩前、首輪を持った手でそのまま犬の首元へ伸ばしていませんか。年齢を重ねた犬の体を触るときに急がないための工夫は、先に声や道具で次の動きを伝え、犬が顔や体をこちらへ向けるのを待つことです。触る場所よりも、触り始める順番を変えてみてください。
まず、犬がこちらを見られる状態かを見る
首輪を着けるとき、足を拭くとき、背中をなでるとき。毎日していることほど、人の手順は速くなりがちです。
けれど、犬が眠っている、別の方向を見ている、歩き終えて呼吸を整えている最中なら、急に手が来ることに驚くかもしれません。年齢とともに動き出しに少し間が生まれても、それだけで痛みや病気と決める必要はありません。ただ、いつものように扱う前に、その間を置く意味はあります。
名前を呼ぶ、いつもの短い声かけをする、首輪やリードを見える位置に置く。犬が目線を向け、体の向きを変えられてから、肩や胸元など見えやすい位置へ手を添えます。頭の上からいきなり手を出すより、犬が手の動きを追える場所から始めるほうが、反応を受け取りやすくなります。
急がないと、小さな変化を比べられる
触る前に一呼吸置く目的は、犬を必要以上に慎重に扱うことではありません。昨日までと同じように首を向けるか、立ち上がるまでに迷いがないか、手を添えたあとに体勢を変えたがるか。日々の短い観察を比べるためです。
たとえば、触ろうとした手から顔をそむける、特定の場所で体を引く、いつもより強く身をよじるといった反応が続くなら、触り方だけの問題とは限りません。首輪や服が当たる場所も含めて、赤み、傷、毛の状態を目で見ます。無理に触って確かめようとせず、その日は装着や手入れをいったん止める判断もあります。
ぐったりしている、呼吸が苦しそう、立てない、吐くなどの様子があるときや、飼い主さんが心配なときは、犬具の調整より獣医師などの専門家への相談を優先してください。
首輪とリードを「急いで出かける道具」にしない
首輪やリードは、犬にとって散歩など次の行動を伝える合図にもなります。だからこそ、手早く装着することだけを目標にすると、犬が見せる小さなためらいを通り過ぎてしまいます。
サクラ犬具製作所では首輪を製作・検品するとき、革の曲がり方や金具周辺の動きを一本ずつ見ています。道具を作る側から見ると、首輪は犬を急かすためのものではなく、飼い主さんと犬が次の動作をそろえるための合図であってほしいと思います。
散歩へ出る流れを、首輪を見せる、声をかける、犬が向きを変える、首元へ手を添える、という順にしてみてください。慣れた犬なら短いやり取りです。それでも毎回この順番を保つと、犬が普段と違う日に気づく余地が残ります。
今日から試せる実践Tips

次に体へ触れる場面では、手を伸ばす前に犬の正面か横から名前を呼び、こちらを見るまで待ちます。そのあと、いきなり首輪のバックルや足先へ手を出さず、見えやすい肩や胸元へ軽く触れて反応を見ます。
首輪を着ける必要があるときも、犬が顔を背けたままなら、少し位置を変えてもう一度合図を出します。嫌がる動きを力で止めるより、手順を一度戻すほうが、その犬に合うペースをつかめます。
毎回同じ順番で触れることは、特別なケアではありません。散歩前の短い時間を、犬の体調や動き方を見比べる時間に変える工夫です。


