朝の支度をしていると、犬がそっと後をついてくることがあります。バッグを手に取る音、上着を羽織る気配、玄関へ向かう足音。飼い主にとってはいつもの外出でも、犬にとっては「そろそろひとりになる時間かもしれない」と感じる合図になっている場合があります。
留守番の前にできることは、特別な訓練ばかりではありません。声のかけ方、部屋の整え方、出かける前の雰囲気を少し見直すだけでも、犬が落ち着きやすい流れを作れることがあります。
出かける前は、いつも通りの空気を保つ
留守番前に「かわいそう」「大丈夫かな」と思う気持ちは自然なものです。ただ、飼い主のそわそわした様子は犬にも伝わりやすいものです。出かける直前に何度も呼び寄せたり、長く抱きしめたりすると、かえって別れ際が大きな出来事になってしまう場合があります。
声をかけるなら、短く、落ち着いた声で十分です。「行ってくるね」「お留守番お願いね」など、毎回似た言葉にしておくと、犬にとっても外出前の流れが分かりやすくなることがあります。大げさに励ますより、普段の会話の延長くらいがよいでしょう。
声かけは「安心させよう」と頑張りすぎない
犬が不安そうに見えると、つい何度も声をかけたくなります。けれど、声をかけるたびに犬が玄関へ近づいたり、飼い主の動きを追い続けたりする場合は、少し距離を置いたほうが落ち着きやすいこともあります。
出発前には、犬が好きな場所でくつろいでいるか、呼吸や表情がいつもと大きく違わないかを様子を見ておくとよいでしょう。落ち着いて伏せているときに、静かな声でひとこと添えるくらいにすると、別れ際の緊張が高まりにくくなります。
留守番する部屋は、刺激を少なめに整える
犬が過ごす部屋は、静かで見通しのよい場所を選ぶと落ち着きやすい場合があります。外を通る人や車がよく見える窓辺は、犬によっては気分転換になりますが、物音や動きに反応しやすい子には刺激が多いこともあります。
カーテンを少し閉める、窓の近くから休む場所を少し離す、テレビや家電の音量を控えめにするなど、犬の反応を見ながら調整してみるとよいでしょう。日差しが強い季節は、直射日光が当たり続けないかも確認しておくと安心です。
休む場所と水の場所を分かりやすくする
留守番中に犬が落ち着ける場所は、いつも使っているベッドやマットなど、においのなじんだものが向いています。新しいものを置く場合は、外出当日に急に使わせるより、普段から少しずつ慣らしておくとよいでしょう。
水は倒れにくい器に入れ、犬が行きやすい場所に置きます。室温や湿度も季節によって変わりますので、出かける前に一度確認しておくと安心です。冷暖房を使う場合も、風が直接当たり続けない位置かどうかを見ておきましょう。
出発前の過ごし方は、静かな流れを作る
外出直前に急に遊びを盛り上げると、そのまま気持ちが高ぶってしまう犬もいます。出かける少し前から、家の中の動きをゆっくりにして、犬が自然に休む姿勢へ移れるようにしておくとよい場合があります。
散歩や食事のタイミングは家庭によって違いますが、留守番前に排泄を済ませられる機会があると、犬も過ごしやすくなることがあります。食後すぐの様子や、水を飲む量なども、いつもの状態と比べて見ておくとよいでしょう。
帰宅後は、静かに様子を見る
帰宅したときに犬が喜んで迎えてくれると、こちらも嬉しくなります。ただ、興奮が強いときは、すぐに大きな声で応えるより、まず荷物を置き、犬の様子を見ながら落ち着いて声をかけるとよいでしょう。
留守番中の様子が気になる場合は、部屋の乱れ方、水の減り方、帰宅時の表情などを無理のない範囲で見ておくと、次の準備に生かしやすくなります。気になる行動が続く、生活に支障が出ているように感じる場合は、専門家に相談する選択肢もあります。
留守番前の準備は、犬との暮らしを整える時間
留守番は、犬に我慢をさせる時間と考えるより、家の中で安全に休める時間として整えていくほうが、飼い主の気持ちも少し楽になります。声をかけすぎないこと、部屋の刺激を減らすこと、休む場所を分かりやすくすること。どれも大きなことではありませんが、毎日の暮らしの中で続けやすい工夫です。
犬の性格や年齢、これまでの経験によって、落ち着きやすい環境は少しずつ違います。愛犬の様子を見ながら、その家らしい留守番の形をゆっくり整えていけるとよいですね。


