いつもの「おいで」を、ふと思いついて外国語で言ってみる。犬が顔を上げると、「言葉が違うってわかったのかな」と気になりますね。犬が外国語を外国語として見分けているとは言い切れません。声の高さや調子、聞き慣れた音、いつもの場面との違いに気づいた可能性があります。
犬は「外国語」という分類より、音の変化に反応する
人は言葉の意味や、何語で話しているかを意識します。一方、犬がその違いを人と同じように捉えているかは、反応だけではわかりません。聞き慣れない音の並びや、いつもと違う抑揚に耳を向けたのかもしれません。
たとえば、飼い主さんが普段より少し高い声で、知らない音の並びを口にしたとします。犬は耳を動かし、鼻先をこちらへ向けることがあります。その仕草から読み取れるのは「何かに注意を向けた」ということ。外国語だと理解した、とまでは言えません。
声の変化は、言葉そのものより目立つこともあります。外国語を話すつもりで大げさな抑揚をつければ、犬にはその調子が先に届くでしょう。人間のほうは発音に集中しているのに、犬は「今日はずいぶん歌うように話すな」と思っているのかもしれません。もちろん、犬の考えを確かめることはできませんが。
聞き慣れた合図は、言語が変わっても手がかりになる
犬が反応するのは、単語の意味だけとは限りません。音の長さやリズム、声の調子、言葉をかけるときの身ぶりや状況など、いくつかの手がかりが重なっていると考えられます。散歩の支度をしているときに「行こう」と声をかける場面と、椅子に座ったまま同じ言葉を言う場面では、周りの様子も違います。
そのため、普段と違う言葉を使って犬が動かなかったとしても、「意味がわからない」と決めつける必要はありません。聞き慣れた音が含まれない、声の調子が違う、あるいは別のことに気を取られている。反応には、いくつもの理由がありえます。
反対に、外国語の呼びかけに反応したからといって、その言葉を理解した証拠とも限りません。音の響きが普段の合図に似ていたのかもしれませんし、声をかけた人の顔や動きを見ていたのかもしれません。犬の反応は興味深いものですが、ひとつの仕草から理由をひとつに絞り込むのは難しいのです。
反応を見るなら、言葉以外の条件もそろえてみる
違いを見たいときは、犬が落ち着いているときに、いつもの言葉と別の言葉を同じくらいの声の大きさでかけてみます。身ぶりや立つ位置もなるべく変えず、犬が顔を向けるか、耳を動かすかを眺めます。大きな声で何度も呼ぶのではなく、一度声をかけたら少し待ちましょう。
この方法でわかるのは、そのときの反応の違いです。犬がどの言語を理解しているかを判定するものではありません。眠いとき、遊びに夢中のとき、周りがにぎやかなときは、声への反応も変わります。実験のようにきっちり条件をそろえようとすると、飼い主さんのほうが先に真剣になってしまいそうです。
犬具を作る私としては、犬の反応を試すときも、驚かせて反応を引き出すより、普段の落ち着いたやりとりの中で違いを眺めることを優先します。何かに気づいた様子があっても、すぐに意味を決めず、声の調子や周囲の様子も一緒に見てみてください。
今日から試せる実践Tips

犬が静かにしているとき、いつもの呼びかけを一度だけ別の言葉に替えてみます。声量と身ぶりはいつも通りにして、耳や顔の向きがどう変わるかを見ます。反応がなくても、聞いていないと決めつけず、その場で試すのは一度でおしまいに。今日の観察では「言葉の意味が伝わったか」ではなく、「どんな音や様子に注意を向けたか」を見てみましょう。


