散歩中の後ずさり、声かけの前に環境を分けて考える

朝の散歩で、いつもなら迷わず通る道の手前で、犬がすっと一歩だけ下がる。リードを持つ手には小さな重みが伝わり、飼い主さんは「どうしたの」と声をかけたくなります。

けれど、その場で急いで答えを出さなくても大丈夫です。後ずさりは、犬が「今は進みにくい」と伝えている動きです。怖さなのか、音なのか、足元なのか。それとも飼い主さんの声や手の動きに反応したのか。いったん分けて見ると、次の散歩が少し読みやすくなります。

後ずさりした瞬間、先に見るのは犬の前にあるもの

まずは犬ではなく、犬の視線の先を見ます。工事の音、自転車が通る場所、風で揺れるのぼり、排水溝のふた、見慣れない段ボール。人には何でもないものでも、犬には急に現れた大きな変化です。

ナナは道の中央が苦手で、壁ぎわを選んで歩きます。大きな犬には案外平気なのに、開けた場所では足が止まります。そんな時に「行こう、行こう」と前へ引くより、壁に近い側へ半歩寄って、進める幅を残すほうが落ち着いて歩けました。

犬が後ずさりした場所を、帰宅してから思い出してみるのも役に立ちます。毎回同じ自動車の音で止まるのか、夕方だけ迷うのか、雨上がりの路面で嫌がるのか。理由を決めつけず、重なる場面を探します。

声かけは「進ませる言葉」より、戻れる言葉にする

環境を見てもすぐには分からない時、次に飼い主さんの声かけを分けて考えます。犬が下がった瞬間に何度も呼んだり、明るい声を強く重ねたりすると、犬によっては急かされたように受け取ります。

私なら、まずリードを張らずに止まり、短く名前を呼びます。それでも迷っているなら、二、三歩だけ元の方向へ戻ります。「前へ行くしかない散歩」にしないことです。戻った先で呼吸や耳の向きがほどけるなら、その場所には何か引っかかるものがあったのでしょう。

モモは人が好きで、声をかけるとこちらを見て気持ちを切り替える子です。ただ、モモのような子でも、周囲が騒がしい時は言葉を増やすより、私が立ち位置を変えるほうが早い時があります。犬のために言葉を尽くす日もあれば、黙って道を譲る日もあります。

首輪やリードを「出発の合図」にしすぎない

道具を作る側から見ると、首輪やリードは犬にとって散歩そのものより、「これから外へ出て、何かが始まる」という合図になりやすいものです。

サクラ犬具製作所では、散歩用の犬具をつくる時、手に取った時の扱いやすさだけでなく、毎日の決まった順序の中で無理なく使い続けられるかを考えます。お客様から届くご相談には、散歩の途中だけでなく、玄関で犬具を出した時から気持ちが固くなる様子も見られます。

後ずさりが続く時は、玄関から見直してみてください。犬具を出す、靴を履く、扉を開ける、その流れが速すぎないか。出発前に一度座って待つよう求めすぎていないか。散歩へ行く時間帯や最初の道を少し変えるだけで、犬の表情が違う日もあります。

犬具屋としては、強く導けることより、犬が次に何をされるか予想できる毎日の流れを優先したいと思っています。散歩は訓練の時間だけではありません。外の空気を嗅いで、飼い主さんと一緒に戻ってくる暮らしの時間です。

今日から試せる、小さな切り分け

  • 後ずさりしたら、まず犬の目線の先と足元を見ます。
  • 一度だけ短く声をかけ、リードを張ったまま説得し続けません。
  • 数歩戻れる余地をつくり、落ち着いた場所から別の道を選びます。
  • 帰宅後に、止まった場所・時間・音・天気を一言だけメモします。
  • 散歩の前後で首輪やリードを置く場所と扱う順番をなるべく固定します。

ぐったりしている、呼吸が苦しそう、立てない、吐くなどの様子がある時や、飼い主さんが心配な時は、犬具や散歩の工夫より先に獣医さんなど専門家へ相談してください。

散歩道で起きる小さな後ずさりは、全部を直す対象ではありません。「今日はここが苦手だったのか」と受け止め、通れる道を一緒に探せば十分な日もあります。帰宅後、リードをいつもの場所へ戻す時に、その日の表情を少し思い返す。そんな習慣があると、道具も散歩も慌てず整えていけます。散歩道具の持ち方や選び方を見直したくなった時は、リード・引き綱のページも、普段の歩き方に合う形を考える入口としてご覧ください。

SAKURA DOGWARE FACTORY
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