食事の器を前にして、犬は食べずにこちらを見上げる。おやつの袋がかすかに鳴ると、さっきまでの沈黙がうそのように反応する。犬がフードを食べず、おやつばかり欲しがるときは、まず食事の時間と出し方を一定にし、おやつで埋め合わせる流れを作らないことから始めます。急に食べなくなった、元気がないなどの変化があれば、食べ方の工夫より獣医さんへの相談を優先してください。
食べないのに、おやつは食べる。それだけで「好き嫌い」と決めない
おやつを食べる姿を見ると、「フードが気に入らないのかな」と考えたくなります。ただ、おやつを食べることだけでは、食べない理由まではわかりません。食欲や体調、食事の環境など、いくつかのことが関係している可能性があります。ここで原因を決めつけず、いつから、どのくらい食べているかを落ち着いて見てください。
意外なのは、食べない犬におやつを差し出すことが、犬にとって「フードを断れば、次に別のものが出てくる」という順番になっていくことです。犬がそう理解していると断言はできません。それでも、食べないたびに別の食べ物が登場する流れは、飼い主さんにも犬にも予測しづらいもの。袋の音を聞き分ける耳は頼もしいのに、器の前では急に考え深い顔をする。そんな場面もあります。
おやつを完全に悪者にする必要はありません。食事の量との兼ね合いを考え、いつ、どれだけ与えているかを把握することが先です。フードを食べない分をおやつで補うことが続くと、食事全体のバランスをつかみにくくなります。食事の量や与え方は、犬の年齢や体調などによっても異なるため、迷ったときは獣医さんに相談してください。
まずは食事の順番を、毎日同じにする
フードを出す時間、食べる場所、食事の前後の過ごし方を、できる範囲でそろえます。食べないからと次々にトッピングや別のフードを追加するのは、いったん控えましょう。毎回の食事を新しい「交渉」にすると、飼い主さんも何を基準に選ぶか迷ってしまいます。
器が置かれる音、床に伝わる小さな振動。犬は食べ物だけでなく、食事の前後に起こることも感じ取っています。これは犬の受け取り方についての推測ですが、順序が安定すれば、食事の時間を予測しやすくなるかもしれません。犬具を作る側から見ても、何かを次々に足すより、いつもの流れを崩さず続けることを先に考えます。もちろん、それで食べると保証するわけではありません。
食べなかったときは、食べた量やその日の様子を記録しておくと、変化を説明するときに役立ちます。記録をつけることが目的にならないよう、まずは「いつもの量からどれくらい違うか」をつかめれば十分です。急な変化や心配が続く場合、ぐったりしている、呼吸が苦しそう、立てない、吐くといった様子がある場合は、食事の工夫を続けず獣医さんに相談してください。
今日から試せる実践Tips

今日の食事は、いつものフードをいつもの場所に出し、おやつを食べない分の代わりとして足さずに、食べた量と様子を見てください。食べなかったら、無理に口へ運んだり、次のひと口をおやつで誘ったりしないこと。食事を終えたあとも、すぐ別の食べ物を出さず、いつもの次の行動へ移ります。
このとき、器の前でじっと見つめ続けると、飼い主さんも犬も気が散ることがあります。少し距離をとり、静かに見守るくらいで十分です。食事の時間を一定にするのは、我慢比べを始めるためではありません。食べない状態が続く、体重や元気に変化がある、どう対応すべきか迷うときは、自己判断で食事を変え続けず獣医さんに相談してください。
今日できることはひとつだけ。次の食事で、いつものフードを出した時刻と食べた量を、短くメモしてみてください。


