犬にだけ使う赤ちゃん言葉、犬にはどう聞こえている?

帰宅して「ただいま〜、いい子でちたね」と声をかけると、犬の耳がぴくり。犬にだけ使う赤ちゃん言葉は、意味までそのまま届くとは限りません。声の高さや調子、聞き慣れた音と一緒に起きることから、犬なりに受け取っていると考えるのが自然です。

言葉より先に、声の調子が届く

飼い主さんの口から出る「ごはん」「お散歩」のような言葉は、犬にとって、繰り返しの中で特定の出来事と結びついた音になっていきます。一方で、「おやつ」を「おやちゅ」と言い換えたとき、その違いを人間と同じように理解しているかはわかりません。

犬には、声の高さや大きさ、話す速さ、表情や身ぶりも伝わります。やわらかく弾む声を聞いて、いつもの「遊ぼう」の場面を思い出すことはあるでしょう。ただし、それは赤ちゃん言葉の意味を正確に読み取ったというより、音の雰囲気や、そのあとに続く行動を覚えているからかもしれません。

玄関で靴を脱ぎながら、声だけ急に一段高くなる。犬の耳が前を向き、しっぽが揺れる。そんな様子を見ると、「今のは通じた」と思いたくなります。けれど、通じたのは言葉の細かな意味ではなく、「帰ってきた」「こちらに気づいている」という一連の合図かもしれません。赤ちゃん言葉のほうが、飼い主さんの気持ちを先に説明している。犬はそこを聞いているのでは、と私は思います。

高い声なら喜ぶ、と決めつけない

明るい声に反応して寄ってくる犬もいれば、急に高くなった声に少し身を引く犬もいます。同じ犬でも、眠っているときと遊びたいときでは受け止め方が変わるでしょう。声への反応だけで「うれしい」「怖い」と決めず、体の向きや距離の取り方も見てください。

たとえば、犬の耳が後ろへ引かれる、顔をそらす、離れていく。そんな動きがあれば、声を少し落としてみる手があります。反対に、自分から近づいてくる、体の力が抜けているなど、落ち着いた様子なら、いつもの調子で話してかまいません。ひとつのしぐさだけを答えにせず、その前後も含めて見ます。

犬具を作る側から見ても、何かを伝えるときは、道具を足すより、犬が受け取れる合図を毎回そろえるほうを優先したいところです。名前を呼ぶ声と、遊びに誘う声が毎回大きく違うと、犬が迷うこともあります。赤ちゃん言葉をやめる必要はありませんが、来てほしいときの合図は、短く聞き取りやすい言い方に決めておくと扱いやすくなります。

言い換えるより、いつもの合図を添える

「お散歩いこっか」を「おしゃんぽ行く?」と言うのは、飼い主さんには楽しい習慣でも、犬には新しい音かもしれません。犬がその言い方で落ち着いて反応するなら、それで問題ありません。まだ伝わりにくそうなら、聞き慣れた言葉を添えてみます。「おしゃんぽ。お散歩、行こうね」のように、同じ場面で同じ音を重ねる方法です。

大事なのは、赤ちゃん言葉を正しいか間違いかで分けないこと。犬が何を聞いているか、私たちには完全にはわかりません。それでも、声の調子や言葉のあとに起きることを、犬が少しずつ結びつけていく様子は見られます。人間の「かわいく話したい」と、犬への「わかりやすく伝えたい」は、別々に考えてよさそうです。

今日から試せる実践Tips

飼い主が犬に声をかけたあと、犬の耳や体の向きを観察するイラスト

今日、犬に話しかけたら、言葉の意味を確かめる代わりに、声をかけたあとの様子をひと呼吸ぶん見てみてください。近づくのか、耳が動くのか、それともそのまま休むのか。反応が薄くても、聞こえていないとは限りません。犬の側の答えは、しっぽの大きな返事ではなく、耳が一度だけ動く程度かもしれません。

赤ちゃん言葉は、飼い主さんの愛情がつい声に出たもの。犬にどこまで伝わったかはさておき、「おやちゅ」という音が家の中で定着して、家族のほうが先に振り向く。そんな小さな勘違いも、犬との暮らしらしいところです。

今日は一度だけ、いつもの赤ちゃん言葉のあとに、犬の耳と体の向きを見てみましょう。

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