床に散らばった紙を見つけたとき、犬が目をそらして伏せている。そんな顔を見ると「わかっているのかな」と感じますね。けれど、表情だけで反省しているとは言えません。まずは犬が何を受け取っているのか、起きたことの前後から考えてみましょう。
その顔は「反省」より、相手への反応かもしれません
犬の目が泳ぐ、体を低くする、顔をそむける。人には申し訳なさそうに見えるしぐさですが、そこから「自分のしたことを振り返っている」とまでは判断できません。犬の表情には、その場の緊張や、目の前の人の声・動きへの反応が表れることもあります。
たとえば、帰宅した飼い主さんが破れた紙を見つけて、少し大きな声を出した場面。犬は紙の状態を説明できるわけではありません。声が強くなったことや、飼い主さんの姿勢が変わったことを受けて、目をそらしたり、動きを止めたりしているのかもしれません。理由はひとつと決めつけず、「いま何が起きているか」を見るのが出発点です。
ここが少し意外なところです。「反省顔」は、犬が悪いことを理解した証拠というより、飼い主さんの反応に気づいた顔かもしれません。紙を片づける手が止まり、部屋が静かになる。犬の顔をじっと見ているうちに、こちらまで取り調べ役のような顔になっていないか、私も気をつけたいところです。
いたずらの前後を見れば、次の対応が変わる
目を向けたいのは、犬が何をしたかだけでなく、その前後です。紙をくわえたのを見たのは今なのか、帰宅してから初めて気づいたのか。犬がその場で紙に近づいているのか、もう離れて別の場所にいるのか。そこが違えば、できる対応も違います。
起きているところを見たなら、まず静かに犬と物の距離をつくり、紙を届かない場所へ移します。大声で叱って、あとから見つけた紙を示しても、犬が人の意図どおりに「さっきの行動」と結びつけるとは限りません。飼い主さんが落ち着いているほうが、何を止めたいのかが伝わりやすくなります。
すでに片づいた後なら、顔を見て答え合わせをするより、部屋に紙が出しっぱなしになっていなかったか、犬が届く場所に置いていなかったかを振り返ります。責める材料探しではなく、次に同じ場面をつくらないための手がかり探しです。目の前の犬は、こちらの顔を見ているかもしれませんが、反省文を書いているわけではありません。
表情だけで決めず、犬の動きを観察する
犬具を扱う店としても、犬の気持ちをひとつのサインだけで決めつけないことを大事にしています。道具を作る側から見ると、目立つひとつの印象より、前後の動きや、いつもの状態との違いを見て判断するほうが実際的です。犬の顔も同じで、目をそらしただけで「反省」とも「怖がっている」とも決めず、体の力の入り方や、その後に落ち着けるかを合わせて見ます。
気になるのは、いたずらの後だけでなく、普段と比べて急に元気がない、動き方が違うなど、別の変化も続くときです。ぐったりしている、呼吸が苦しそう、立てない、吐く、または飼い主さんが心配なときは、道具やしつけの話より先に獣医さんなど専門家へ相談してください。表情から原因を診断することはできません。
今日から試せる実践Tips

次に「反省している顔かな」と思ったら、すぐに意味を決めず、ひと呼吸おいて犬の体全体と周囲を見てみてください。何が起きた直後なのか、犬は今どこにいて、何をしているのか。そこが見えると、叱るより先にできることが見つかります。
今日できるのはひとつだけ。犬の顔に答えを求める代わりに、次にその表情を見たとき、直前に起きたことを思い出してみましょう。


