ハロウィンの「失敗写真」に、愛犬の本音が写っている
スマホの写真フォルダで、去年のハロウィンを開いてみてください。
SNSに載せた「いちばんいい一枚」ではなく、その前後です。ぶれた写真、横を向いた写真、目をつぶった写真。
そのなかに、あくびをしている一枚はありませんか。
私のフォルダにはありました。かぼちゃ色のケープを着たモモが、カメラから顔をそむけて、大きく口を開けている写真です。眠かったんだな、と思って、その日はそのまま撮り続けました。
いまは、少し違って見えます。
うまく撮れなかった写真のほうに、モモの気持ちが写っていたのかもしれない。
失敗写真は「並び」で見る
犬は「もうやめて」と言えません。そのかわり、しぐさで伝えます。緊張や不安があるときに出やすいのは、たとえばこんな様子です。[1]
- あくび
- 舌をぺろっと出す、鼻をなめる
- 顔をそむける
- 白目が見える(顔はこちらを向いたまま、目だけでよけている)
- 耳を後ろに引く
- 体が固まる
ただ、一枚だけでは何もわかりません。あくびは眠いときにも出ますし、おやつを待って口をなめることもあります。
見てほしいのは並びです。連写した写真を、順番にめくってみてください。
1枚目:こっちを見ている
3枚目:顔をそむける
5枚目:舌がぺろっと出る
8枚目:大きなあくび
撮るほどサインが重なっていくなら、それはたまたまではなさそうです。反対に、あくびのあとケロッと遊びはじめていれば、気にしすぎなくて大丈夫。
撮っているあいだは、画面の中の顔しか見えていません。写真は、そのとき気づけなかった変化を、あとから順番に見せてくれます。
今年のハロウィン、ここだけ変える
服は、本番の前に家で試す
着せたとたんに動かなくなる。それは「おとなしい」ではなく、「固まっている」のかもしれません。
服が平気な犬もいれば、苦手な犬もいます。[2] 当日の前に家で少しだけ着せて、歩き方がいつもどおりか見てみてください。
苦手そうなら、服はやめて背景を飾りましょう。犬が口にできない位置にかぼちゃを置くだけでも、写真はちゃんとハロウィンになります。
撮影は「やめどき」を先に決めておく
撮る側には、「もう一枚」の理由がいくらでもあります。ぶれた。目線がずれた。ケープが曲がった。
だから、やめどきは撮る前に決めておきます。たとえば「顔をそむけるか、あくびが2回続いたら、カメラを置く」。それだけで、撮影がだらだら長引かなくなります。
イベントは「すぐ帰れる予定」で行く
仮装した人や、いつもと違う音や人の多さに戸惑う犬もいます。[2] 出かけるなら、まず会場の端から。落ち着かなければ帰る。最初からそういう予定にしておけば、「せっかく来たのに」で迷わずにすみます。
うちのナナ(14歳のチワワ)は、広い場所が苦手です。だから、そもそも連れていきません。モモが楽しめる場所が、ナナにも楽しいとは限らない。同じ家の犬でも、ハロウィンの過ごし方は別々でいいと思っています。
なでるときは、「離れられる」ようにしておく

なでられている犬が、じっとおとなしくしている。それは「気持ちいい」のサインでしょうか。
カナダで、人に慣れたセラピー犬18頭を対象にした研究があります(2025年発表)。初対面の人に3分間なでてもらう実験を、2つの条件で比べました。[3]
- A:リードでつながれ、犬が離れようとしても、なで続ける
- B:リードなしで、犬が自由に近づいたり離れたりできる
Aでは、耳を後ろに倒すしぐさが多く見られました。戸惑いや軽い不安のときに出やすいサインです。
意外なのはBです。いつでも離れられるのに、犬たちは時間のおよそ8割を、人の手が届く距離で過ごしていました。
犬は、なでられるのが嫌だったわけではありません。「離れられない」ことが、負担になっていたのです。
研究者は、もうひとつ大事なことを指摘しています。逃げられない状況では、困っているサインがかえって表に出にくくなることがある。「おとなしくなでられている」は、「平気」の証拠にならないということです。
ここで思い当たることはないでしょうか。私たちは、ふだん何気なくAの状況をつくっています。
- 抱っこしたまま、なでる
- リードを短く持って、「どうぞ」と知らない人になでてもらう
- ひざの上やソファの隅で、犬が動けないままなで続ける
どれも、犬が「もういい」と思っても離れられない形です。ハロウィンのイベントで「なでてもいいですか」と声をかけられる場面は、まさにこれにあたります。
今日からできること:
- 人になでてもらうときは、リードをゆるめて待つ。犬が自分から近づいたらお願いする。近づかなければ「今日は緊張してるみたいで」と断ってかまいません。
- 抱っこしたまま、人になでさせない。いったん下ろして、行くかどうかを犬に選ばせます。
- 家では、3秒なでたら手を止める。寄ってきたら続ける。離れたら、そのまま見送る。
小さな研究なので、すべての犬に当てはまるとは言えません。それでも、この結果には気持ちが動きました。
離れる自由があると、犬はそばにいることを選んでくれる。
ハロウィンの夜は、玄関に気をつけて
来客があると、そのたびにドアが開きます。ドアを開ける前に犬は別の部屋へ移し、お菓子は届かない場所へ。[2]
迷子札の電話番号が今の番号になっているか、マイクロチップの登録情報が最新か。この機会に、あわせて確認しておくと安心です。
カメラを置いたあとの一枚
あのあくびの写真を見てから、決めたことがあります。
今年は、モモがあくびをしたらカメラを置く。
そのあとモモが何をするのかは、まだわかりません。おもちゃをくわえて戻ってくるかもしれないし、ソファでそのまま寝てしまうかもしれない。
でも、その姿を撮れたら、たぶんそれが今年いちばんの一枚になる気がしています。
ちなみに、去年の写真にあくびが写っていても、自分を責めなくて大丈夫です。気づいた今年から、変えればいいだけですから。
あなたの写真フォルダには、どんな「失敗写真」がありましたか?
愛犬のために「やめてよかったこと」があれば、それもぜひコメントで教えてください。
サクラ犬具製作所について
衣装がなくても、首輪はいつも写っている。
だからこそ、その子に似合う一本を。本革の首輪と迷子札をつくっています。
参考資料
- Dogs Trust「How to understand your dog’s body language」
犬のしぐさを、状況・個体差・全身の様子と合わせて見るための解説。 - Dogs Trust「Halloween advice」
衣装、仮装、来客、玄関からの飛び出しなどへの配慮。 - Sarrafchiほか(2025)「Can I touch you? A pilot study comparing consensual and non-consensual human-dog touch interactions」
セラピー犬を対象に、自由に離れられる条件などでの触れ合いを比較した予備的研究。


