散歩の途中で犬が立ち止まり、飼い主さんは時計を気にする。そんなとき、犬の「わがまま」に見える行動は、人にとって予定どおりでないだけかもしれません。まずは困った行動と、犬が何を伝えているかを分けて考えます。応じるかどうかは、そのあと決めれば十分です。
「困る」と「わがまま」は同じではありません
たとえば、玄関を出てすぐ犬が歩かなくなる。リードが張り、靴底が地面をこする音だけが続く。人は「早く歩いて」と思いますが、犬の側にどんな理由があるかは、その一場面だけではわかりません。聞こえた音が気になったのか、においを確かめているのか、あるいは単に進みたくないのか。想像はできても、決めつけはできません。
ここで役に立つのは、「私が困っていること」と「犬の行動」を別々に言い直すことです。「時間がない」は人の事情。「犬が立ち止まっている」は見えている事実です。二つをいったん分けると、犬を責める言葉を足さずに、次の対応を考えられます。
「わがまま」という言葉は、人の予定や期待から外れたときに出てきやすいものです。でも、犬の行動をその一語でまとめると、何が起きているかを確かめる前に話が終わってしまいます。言い換えれば、犬が人を困らせようとしていると判断する必要はありません。まず観察できることから始めます。
同じ行動でも、前後の流れを見てみる
立ち止まることが、いつ、どこで、どんな順番で起きるのか。家を出てすぐなのか、車や工事の音がしたあとか、いつもの道の角なのか。場面を分けてみると、「いつも頑固」とひとまとめにしていた行動に、違いが見つかることがあります。
犬は人の言葉で予定を聞いているわけではありません。犬の側から想像すれば、急にリードを引かれることや、立ち止まった直後に急かされることは、次の動きを読み取りにくくするかもしれません。もちろん、理由はその場で確定できません。だからこそ、引っぱって答えを出すより、いったん足を止めて、周囲と犬の様子を見ます。
犬具をつくる側としては、強く動かすことより、次に何が起きるかを犬が予測しやすい順番を優先したいと考えます。散歩なら、立ち止まる、周囲を見る、飼い主さんが進む方向を示す。それでも動かないなら、急かし続けず、いったん別の道や帰る選択を考える。人の都合を無視するのではなく、犬に伝わる手順をつくる、ということです。
もちろん、毎回犬の希望どおりにする必要はありません。予定がある日もありますし、安全のためにその場を離れたいこともあります。大事なのは、応じるか断るかを「わがままだから」で決めず、今の状況に合わせて選ぶこと。人間の都合がある、と認めたほうが、犬に理由を背負わせずに済みます。
今日から試せる実践Tips

次に犬が立ち止まったら、すぐにリードを引かず、まず一度だけ周囲を見回してみてください。音、道の変化、犬の向きや姿勢など、目に入ったことを心の中で短く言葉にします。「何が嫌なの?」と答えを当てにいくのではなく、「何が起きている?」と確かめるためです。
そのうえで、少し待つ、進む方向を変える、今日はここで引き返す、のどれが現実的かを選びます。毎回うまくいく方法を探す必要はありません。人の予定と犬の様子を分けて見られたら、その時点で判断は少し落ち着きます。今日の散歩で一度、犬を「わがまま」と呼ぶ前に、見えた事実をひとつだけ言葉にしてみてください。


